第2回 院長コラム 病院ではなく「自宅で診る」ということ
訪問診療を始めて、私が大きく感じたことが1つあります。
それは、「患者さんのご自宅には、診察室では分からない情報がたくさんある」ということです。
病院の外来では、どうしても病気に対する検査が中心になります。しかし自宅を訪れると、何を食べ、どれくらい歩けるのか、薬をどう管理しているのか、ご家族がどのくらい介護を担っているのか。患者さんの「本当の生活」が見えてきます。
薬が飲めていない患者さんでも、自宅で家族と一緒に診ると「薬が多すぎる」「錠剤が大きくて飲めない」「飲んだことを忘れてしまう」という本当の理由が見つかることがあります。
在宅医療では、病気だけを見るのではありません。
生活を知ることで、その人にとって無理のない治療ができる。これが在宅医療の大きな良さです。
もう1つ感じるのが、自宅で過ごすことの大切さです。
長く入院していると、一日の大半をベッドで過ごし、天井を見ながら時間が過ぎていくことがあります。そんな患者さんが外出や外泊で自宅へ帰ると、病院へ戻ってきたとき、とてもすっきりとした良い表情をされていることがあります。
「先生、やっぱり自宅はよかったよ」と。
病状によっては、もう今しか自宅へ帰れない。そんな患者さんをできれば自宅へ返してあげたいと思ったことは、これまで数多くありました。
病気を抱えていても、住み慣れた自宅で、その人らしく暮らしていける。その生活を医療で支えることが、訪問診療だと私は考えています。
いたばし在宅クリニック
院長 片桐 敏雄